定期600回超えて更なる挑戦


群馬交響楽団 来年度プログラム

群馬交響楽団(群響)の2024年度の定期演奏会のプログラムが10月発表になった。来年7月には定期演奏会が600回の節目を迎える群響。就任2年目となる飯森範親常任指揮者とソロ・コンサートマスターの伊藤文乃さんにインタビューした。(谷 桂)

―群馬交響楽団の雰囲気が変わりましたね?
伊藤:とてもモチベーションが上がっています。今年4月からコンサートマスターとして福田俊一郎さん、他にも若い楽員が加わり大きな力になっています。今年度、毎回演奏している古典派のモーツァルトは、感性を磨き基本に立ち返りながら臨みました。

―来期のプログラムについての特徴は?
飯森:今年度、古典派のモーツァルト作品を毎回入れましたが、来期は、他にもベートーヴェンやロマン派のブラームス、近現代のストラヴィンスキー、シェーンベルクといった様々な時代の作品をバランス良く取り入れました。

もちろん東京など県外のお客様にも来てほしいのですが、群響の場合、まず大事にしなくちゃいけないのは群馬県の皆さん。10月に行った井上道義先生のショスタコーヴィチの定期演奏会は、難しい曲でしたが満席でした。お客様の聴く耳もレベルアップしています。それを踏まえて来期は様々な音楽が聴ける思い切ったプログラムを組みました。

―7月には、600回目の定期演奏会を迎えます
飯森:7月27日の600回定期演奏会では、600という数字に関連させて、モーツァルトの6つの舞曲K600を取り入れました。さらにコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲、R・シュトラウスの家庭交響曲などの名曲を演奏します。

コルンゴルトの作品は、チャイコフスキー国際コンクールヴァイオリン部門で2位のベルギー人、マルク・ブシュコフさんを迎えます。以前、リサイタルで彼の演奏を聴きましたが、あっけにとられるほどすごかった。いまの群響なら、絶妙な掛け合いになる。とんでもなく素晴らしい演奏になりますので楽しみにしてください。

―家庭交響曲はどのような?
飯森:作曲家R・シュトラウスの家庭内の日常を描いた交響詩のような交響曲です。お皿が飛んだり、ハチャメチャな様子がすごく面白い。最後「ド、ラ、ファ」で終わるんですが、「これがシュトラウスなんだ」ということを表現しています。群響や群馬県の皆さんとファミリーになるというメッセージを込めて指揮を振りたいと思います。大編成でまさしく総力を挙げて演奏しますので、ご期待ください。

―9月のカルミナ・ブラーナ、3月のマーラー9番については?
飯森:オルフ作曲のカルミナ・ブラーナは、ラテン語で書かれたとても濃い作品です。私が20代で渡欧した時に、ドイツ人の先生から約4年間ラテン語を習いましたが、それを基に、オーケストラだけでなく、合唱団の皆さんにも曲や音楽についてお伝えしたいと思っています。

3月にはマーラーの交響曲9番を演奏します。群響とは21年に5番、23年に1番を演奏しましたが、マーラーは私にとって特別。演奏では、13個の不吉な数の音をトランペットが鳴らします。9番を書いた後に世を去ったマーラー自身の死を予感させ、妻アルマとの出合いが死を早めたのかどうなのかなど、人生の曲折を表現し演奏することに気持ちが高まります。

―伊藤さんのソロが10月にあります
伊藤:10月に高崎芸術劇場と東京、長野県上田市でリムスキー・コルサコフの交響組曲《シエラザード》を弾きます。これまでも1年間に1回くらい弾いているので、集大成として、新たな気持ちで表現したいです。

―今年から始まった楽員のソロが来年もあります
伊藤:楽員のソロは、すごく良いことだと思います。今までなんでやらなかったのかというぐらいの気持ちです。モチベーションが上がりますし、オーケストラにとっても良い刺激になり、新たなファンと繋がる機会になります。

一方で、私は昨年2月、愛知のオケで客演をして、指揮者のアレクサンダー・リープライヒさんと出合いました。その時の雰囲気が良かったので、群響の上野喜浩音楽主幹にお話ししたところ25年2月に群響の指揮をしていただけることになりました。ソロや客演をすることにより新たに生まれるものがあります。

―外国人アーティストが多いですね

飯森:来期10回の定期演奏会のうち、海外指揮者5人、海外ソリスト6人になりますが、来年もまずは、私が古典派の曲を取り入れ、群響の底力を上げようとしています。力が付いたところに、海外指揮者の空気感やリズムの取り方が加わったら面白くなりそうです。それにより良い化学反応が起こることを期待します。きっと群響は格段にうまくなりますよ。
伊藤:来年度もいろんな要素がありますが、群響は確実に 階段を上がっている実感があります。海外のアーティストに出合うことで、学ぶこともたくさんありそうで、楽しみです。

―GTシンフォニック・コンサートについては?
飯森:群響と高崎芸術劇場が一緒に作るGTシンフォニック・コンサートでは、11月2日に、モーツァルトのオペラ《魔笛》のハイライトを演奏します。舞台作品を演奏すると幅が広がります。ちょっと違った角度からコンサートを楽しんでいただきたいと、自ら解説しながら、ナンバーを繋げていきます。

高崎芸術劇場は、全国のホールで間違いなく3本指に入ります。ただ音が良いだけではなく、周りの付帯設備も含めて機能性が良い。世界の中でもすごいホールです。群響はホールと一緒に飛躍していくでしょう。

来年は群響のポテンシャルをしっかりと把握して、更なる挑戦に向かう足がかりにしたいと思います。来年度もご注目ください。

 

群馬交響楽団常任指揮者
飯森 範親  さん
いいもり・のりちか/1963年生まれ、桐朋学園大学指揮科卒業。ベルリン、ミュンヘンで研鑽を積む。94年から東京交響楽団の専属指揮者、モスクワ放送交響楽団特別客演指揮者などを歴任。2023年4月より、群馬交響楽団常任指揮者に就任。
http://iimori-norichika.com/

群馬交響楽団ソロ・コンサートマスター
伊藤 文乃 さん
いとう・あやの/1968年生まれ、東京都出身。ソリストとして東京交響楽団などと共演。その後、桐朋学園大学を首席で卒業し留学。スイスのベルン音楽院を首席で卒業。広島交響楽団コンサートマスターを経て、2009年から群馬交響楽団コンサートマスター、22年にソロ・コンサートマスター。

(左から)10月の会見に臨んだ群響の上野喜浩音楽主幹、藪原博専務理事、飯森常任指揮者、伊藤ソロ・コンマス、高崎芸術劇場の児玉正蔵館長、串田千明事業企画担当部長

来年度の定期演奏会から
問い合わせ 同楽団( 027-322-4316 )

● 2024年7月27日 第600回定期演奏会
高崎芸術劇場 開演午後4時
指揮 飯森範親
モーツァルト 「6つの舞曲K600」コルンゴルト 、「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」/ヴァイオリン マルク・ブシュコフ、R.シュトラウス「家庭交響曲」

● 2024年9月22日 第601回定期演奏会
高崎芸術劇場 午後4時
指揮 飯森範親 オルフ カルミナ・ブラーナ他

● 2024年10月19日 第602回定期演奏会
高崎芸術劇場 午後4時
指揮 デイヴィッド・レイランド  リムスキー=コルサコフ
交響組曲シェエラザード 作品35 /ヴァイオリン 伊藤文乃

● 2024年11月23日 第603回定期演奏会
高崎芸術劇場 午後4時
指揮 太田弦
ブラームス ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調 /ヴァイオリン伊藤文乃、チェロ長瀬夏嵐

● 2025年3月15日 第606回定期演奏会
高崎芸術劇場 午後4時
指揮 飯森範親
マーラー交響曲第9番ニ長調他

■「群響×劇場」が作り上げるGTシンフォニック・コンサート

10月の記者会見では、来年度3シーズン目を迎える群馬交響楽団と高崎芸術劇場がタッグを組んだ演奏会シリーズ「GTシンフォニック・コンサート」についても発表があった。シリーズは全6公演で「映画&ドラマ音楽特集」(下野竜也指揮、7月)やオペラ「魔笛」ハイライト(飯森範親指揮、11月)など、クラシックの名曲に加えてポピュラー音楽も盛り込み、定期演奏会とはひと味違ったサウンドを堪能できる。

ラインナップについて、同劇場の串田千明事業企画担当部長は「オーケストラのファンを広げようと、児玉正蔵館長が提案してスタートしたシリーズです。『クラシック音楽に触れてみたい、生のオーケストラを聴いてみたい』とお思いの方に、自信をもっておすすめできるコンサートばかりです。私たちの劇場の雰囲気とともに気軽にお出かけください」と語った。

●2024年7月13日 GTシンフォニック・コンサートvol.2
高崎芸術劇場 映画&ドラマ音楽特集

●2024年11月2日 GTシンフォニック・コンサートvol.4
高崎芸術劇場 モーツァルト オペラ《魔笛》ハイライト

 

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