千年以上受け継がれている色彩 草木染で再現

収蔵品展「草木染の美 冬から早春」

展示風景 黄櫨染御袍の立ち雛と『延喜式』の色

植物の葉や枝、樹皮、根などや、虫や貝といった自然界にあるものから色を取り出し、糸や布を染める手法は、現在では「草木染」と呼ばれています。江戸時代の終わり頃までの着物や布地はこうした草木染で彩られてきました。高崎市染料植物園は、草木染の染料となる植物を保護・育成している植物園です。

園内には飛鳥・奈良時代から現代まで時代に沿って、主に使われた染料植物をご覧いただける「染料植物の道」があり、染色工芸館では、歴史的な色彩を草木染で再現した布や、着物などの染織品を展示しています。

開催中の収蔵品展「草木染の美・冬から早春」では、昨年秋に行われた「立皇嗣の礼」で天皇陛下が着用された装束「黄櫨染御袍」を再現した立ち雛や、秋篠宮殿下が着用された装束の色「黄丹」を再現した反物などを展示しています。黄櫨や黄丹は、染めるために必要な植物や媒染剤などが『延喜式』という平安時代(10世紀前半)に編纂された史料に記されており、千年以上受け継がれている色彩なのです。

山崎樹彦「妙義早春」

また、吉祥文様や季節を感じるモチーフが描かれた染織品を紹介しています。カタクリの花を描いた屏風は山崎樹彦作「妙義早春」。作者は富岡市に在住し草木染による型染の作品を手がけています。この作品では松煙(松の木を燃やした煤)、クヌギ、コブナグサ、ラック(カイガラムシの分泌物に含まれる色素)などの染料が使われています。

園内ではフクジュソウやロウバイなどいち早く春の訪れを告げる花が見ごろとなる季節です。お天気のよい日に散策をお楽しみ下さい。

 

高崎市染料植物園
杉本あゆ子 さん

金沢美術工芸大学芸術学専攻卒業。須坂版画美術館、高崎市美術館で学芸員として勤務。2017年より高崎市染料植物園に勤務。染色工芸館での展示を担当

■高崎市染料植物園染色工芸館(高崎市寺尾町2302・11)■027・328・6808■2月28日まで■午前9~午後4時半(最終入館は同4時)■月曜休園(2月12、24は休園)■入館料一般100円、大高生80円、65歳以上、中学生以下は無料■同園で収穫した藍草の種をプレゼント。2月2日から染色工芸館窓口にて配布。なくなり次第終了します

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