革新的な動物彫刻をたっぷり味わって

「開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展 動物を愛した彫刻家」

《シロクマ》1923‐1933 群馬県立館林美術館

現在、当館では開館20周年記念展を開催中です。フランソワ・ポンポン(1855~1933年)は、20世紀初めに革新的な動物彫刻を生み出した彫刻家。館林美術館では、67点の作品を収蔵し、コレクションの主要作家に位置づけています。ポンポンの代表作の《シロクマ》をご存知の方は多いことでしょう。

おなじみのポンポンですが、今回の展覧会は開館以来、初めてフランスから作品を借用して構成する大規模回顧展となっています。生まれ故郷ブルゴーニュ地方のディジョン美術館、出生地ソーリューのフランソワ・ポンポン美術館、そしてパリのオルセー美術館から名作を借用し、当館のコレクションを加えて約90点の彫刻・デッサンを紹介しています。

ポンポンの動物彫刻というと、その愛らしさを第一に思い浮かべるかもしれません。しかし、彫刻史上に残した功績も大きなものでした。19世紀後半、彫刻家を志したポンポンは、ロダンなど様々な彫刻家の下彫りの仕事を長年続け、50歳を過ぎてから動物彫刻を始めます。この時に生み出した、表面のなめらかな動物彫刻は、毛並みや羽を細かく表す伝統的な動物彫刻とは全く異なるものでした。

《ペリカン》などが展示されている会場

ポンポンの新しい動物彫刻の原点となったのは、ある視覚的な体験です。野外で動物観察をしていたポンポンは、ある朝、10メートルほど離れたところにいる一羽のガチョウが、光に包まれ、美しい輪郭線を描いているのに大きな感銘を受け、そこから、動物の形を実際のボリュームに即しながら、単純化することを目指したのです。

1922年の《シロクマ》で一躍評価を得たポンポンは、67歳から77歳までの晩年の11年間に最も活躍し、様々な動物彫刻を生み出しました。

本展では、ポンポンが集めていた動物の写真や絵はがき、ポンポンが使っていた道具など、300点の資料も展示しています。この機会にポンポンの世界をたっぷりと味わって頂ければ幸いです。

館林美術館 学芸員
松下 和美 さん

1998 年より県立近代美術館学芸員、のち県立館林美術館学芸員。主な担当展覧会に、「フランス絵本の世界展」(2017年)、「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」、「ピカソ展-ゲルニカ[タピスリ]をめぐって」(2019年)

県立館林美術館(館林市日向町2003)■0276・72・8188■1月26日まで■月曜休館■一般900円、大高生450円、中学生以下無料■連続講座①1月9日「ポンポンの石膏のひみつ」講師=神尾玲子 ②1月16日「フランス、ポンポンの故郷を訪ねて~パリ」講師=松下和美 ③1月23日「フランス、ポンポンの故郷を訪ねて~ブルゴーニュとノルマンディー」講師=松下和美 各午後2時~3時申込不要・先着50人・参加無料

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