文学者&カメラマンとしての業績にスポット

企画展「写真で見る近代詩 ー没後20年伊藤信吉写真展ー」

伊藤信吉(1906年~2002年)

当館では現在、企画展「写真で見る近代詩―没後20年伊藤信吉写真展―」を開催しています。前橋市出身で詩人、評論家として活躍し、当館の開館時館長を務めた伊藤信吉(1906年~2002年)は、多くの写真も残しています。本展は文学者としてまた、カメラマンとしても優れた業績を残した伊藤信吉にスポットを当てて紹介する展覧会です。

伊藤信吉は群馬県群馬郡元総社村(現・前橋市)で生まれました。萩原朔太郎に強い影響を受けて15歳頃から詩を書き始め、『上毛新聞』に投稿したり、同人誌を作ったりしました。20代の頃はプロレタリア文学運動に参加し、その中心となって活動しました。しかし27歳で運動を離脱し、第一詩集『故郷』を出版してからは、積極的な詩作を控えるようになります。 その後は、評論雑誌で近代詩人論を展開し、詩壇の批評家としての地位を築きました。そして70歳以降、本格的に詩作を再開し、95歳まで文学者として活躍して多くの著作を残しました。会場入口には、伊藤の著作が年代ごとに一目で分かるインパクトのある展示をしており、本企画展の見どころの1つとなっています。

弥彦神社付近 新潟県弥彦村にて(伊藤信吉 撮影)

展示している写真は、伊藤が昭和41年(1966)、59歳から、『東京新聞』に詩的紀行「詩のふるさと」を連載したことをきっかけに、全国の詩人ゆかりの地を訪れて撮影したものです。伊藤の写真と共に飾られている数々の詩は、企画展前に行った来場者へのアンケートでも人気の高かった、北原白秋や中原中也などの詩人の名詩で、伊藤の紀行文とともに味わうことができます。

写真や詩以外にも、伊藤と親交が深かった萩原朔太郎や室生犀星が、伊藤の著作の序文として書いた直筆原稿や、川端康成が伊藤に宛てた書簡、旅の足跡が分かる地図や、初展示となる旅程メモ、詩のスクラップブックなど約50点の資料を展示しています。

また、参加型企画としてクイズや写真のスライドショーなどもあり、お子さまから大人の方まで楽しめる展覧会となっておりますので、ぜひこの機会に足をお運びください。

県立土屋文明記念文学館 学芸係
河野 裕子 さん

甘楽郡南牧村生まれ。2021年4月、県立土屋文明記念文学館に赴任。同年10月に新収蔵資料を公開したミニ展示「夭折の詩人長澤延子」を担当

県立土屋文明記念文学館(高崎市保渡田町2000)■027-373-7721■3月13日まで■午前9時半~午後5時■火曜休館■一般410円、大高生200円、中学生以下無料)■1月30日、2月19日午後2時から展示解説会(要観覧料)/2月5日、3月5日午後2時から記念講演会(参加無料、要予約)

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