世代超え愛され続ける、絵本の世界を存分に

「かこさとしの世界展 だるまちゃんもからすのパンやさんも大集合!」

当館では現在、企画展「かこさとしの世界展 だるまちゃんもからすのパンやさんも大集合!」を開催中です。かこさとし(1926~2018年)が絵本作家になるまでに描いた絵画や紙芝居、初期から晩年までの絵本原画や下絵など約160点を展示しています。絵本原画では人気シリーズの「だるまちゃん」や「からすのパンやさん」をはじめ、数点ずつですが40冊近くを紹介、世代を超えて多くの人々に愛され続けている、かこさとしの軌跡を辿ることができる展覧会となっています。

かこは1959年に『ダムのおじさんたち』で絵本作家としてデビューしました。当時の日本の社会状況にふさわしい絵本を、との依頼があり、電力不足で停電も多い時代だったことから水力発電のためのダム建設をテーマに選びました。建設に携わる人々の様子や、周辺の景色などを丹念に描いた絵本は好評を博し、以降の絵本作家としての道が開いたのです。本展では、本作の複製原画を未使用作品も含めて全点紹介しています。

化学者でもあったかこには多くの科学絵本の依頼が来ることとなり、本展では『かわ』(1962年)、『地球』(1975年)、『宇宙』(1978年)などの原画や下絵を見ることができます。かこは未来を生きる子どもたちのために、20年後にも通用する知識を伝えることを心掛け、それぞれのテーマについて徹底した情報収集を行いました。そして制作期間の9割をかけて構成を練り、子どもたちが興味を持ってそのテーマを理解できるよう、身近な世界から順序立てて描きました。

こうした姿勢は、歴史や美術、人間の体など、他の様々なテーマでも発揮されています。会場では展示作品の絵本を閲覧するコーナーもありますので、かこさとしの絵本の世界を存分にお楽しみいただければと思います。

「だるまちゃんたちとからすのかぞく」 ©Kako Research Institute Ltd.2019
『だむのおじさんたち』1959年 福音館書店/復刊ドットコム ©Kako Research Institute Ltd.

群馬県立館林美術館 学芸員
熊谷 ゆう子 さん

1997年より県立近代美術館、館林美術館の学芸員として勤務。県立近代美術館では教育普及的展覧会や各種教育普及事業を開催、館林美術館では開館時の業務に携わったほか、「カミナリとアート」(2017年)や「たてびレポート」(2021年)などの企画展や絵本原画展を担当

県立館林美術館(館林市日向町2003)■ 0276-72-8188 ■12月25日まで■午前9時半~午後5時(入館は午後4時半まで)■月曜休館■一般830円、大高生410円 ※中学生以下無料。障害者手帳などをお持ちの方とその介護者1人は無料 群馬県在住65歳以上の方は平日のみ2割引■12月10日午後2時から、学芸員による作品解説会

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