「詩はもっと自由でいい。」を体感できる展覧会

世界が魔女の森になるまで ―第30回萩原朔太郎受賞者 川口晴美展

「世界が魔女の森になるまで」のフレーズを円筒状にライティングした「コトバの灯」

川口晴美さん(1962年~)の詩集『やがて魔女の森になる』が記念すべき第30回萩原朔太郎賞を受賞されました。この詩集は「世界が魔女の森になるまで」という詩が中心に据えられ、そのモチーフとして〝シスターフッド〟や〝フェミニズム〟の問題、さらに、〝小さな傷や名づけようのない痛みや苦しみを詩の形ですくい取りたい〟との思いが含まれていると川口さんは述べています。

私は仕事柄、故人の詩を扱うことが多く、その作品の意図が見えない、昨日と今日で読んだ作品の感想や考え方が全く逆になることがよくあります。冷静に考えればそれは至極当然ですが、学術的にどうしてもそこへ明確な「答え」を求めてしまい、迷宮に捉われ「詩」そのものに辟易することがありました。

そんな時に川口さんと出会い、幅広い詩へのスタンスや言葉の運び方、豊かな表現方法に触れ「詩はもっと自由でいい」というインスピレーションを受け、迷宮に一筋の光があてられたような感覚を覚えました。

今回はその感覚と川口さんの思いを軸に展覧会を構成しています。言葉を、川口さんを、五感で直感的に感じてもらうため、詩集の中心である「世界が魔女の森になるまで」のフレーズを円筒状にライティングした「コトバの灯」、詩集から引用した言葉たちをガチャガチャで持ち帰る「コトバのガチャ」、単著を収めた「コトバのロッカー」、詩作品を自由に選び「自分だけの川口さん作品集」を作るコーナー「詩をポケットに」など、多面的な展示を心掛けました。川口さんの魅力に触れつつ、「詩」そのものを自由に「感じて」いただければと思います。

この展覧会では、既に終了のものを含め3つのイベントを企画、すべてに川口さんが来館されます。川口さんの魅力を感じられる絶好の機会ですので、展覧会と共に気軽にお出かけください。

前橋文学館 学芸員
石塚 まりこ さん

東京生まれ。私大文学部卒。群馬県へ移住後、フリーの編集ライター・デザイナーを経て2020年より現職。2021年「いきものずかん」展、2022年「雨月衣」展など担当。文学や詩と格闘しつつ、趣味のアウトドアとクラフトワークに没頭中

前橋文学館(同市千代田町3-12-10)■027-235-8011 ■一般500円、18歳以下無料■5月21日まで■水曜休館(5月3日は開館)■午前9~午後5時■4月23日、作品朗読会/5月6日、ワークショップ(いずれも要予約)

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