人間の無意識や直感と関わる作品一堂に

企画展示「夢と自然の探求者たち
―19世紀幻想版画、シュルレアリスム、現代日本の作家まで」

現在、当館では企画展示「夢と自然の探求者たち」を開催中です。本展は人間の無意識や直感と関わる作品を、2つの県立美術館と足利市立美術館の浅川コレクションのほか、個人コレクションから紹介するものです。

展示は、19世紀の幻想的な版画作品から始まります。戸外の光を描いた印象派と同時代に、印象派とは対照的に幻想文学にモノクロームの挿絵を描いた作家オディロン・ルドンらを取り上げます。

ジョアン・ミロ『ユビュ王』より(1966年 リトグラフ・紙 県立近代美術館蔵 ©Successió Miró/ADAGP,Paris& JASPAR,Tokyo,2023 G3147)

20世紀に入ると、第一次世界大戦の惨禍を経験した若い作家たちが、合理主義を疑い、純粋な精神活動、内的なイメージの探求へと向かいます。シュルレアリスムと呼ばれるこの運動は、文学や美術の領域で、多くの作家たちに影響を及ぼしました。その一人ジョアン・ミロは、異色のドタバタ喜劇『ユビュ王』に、一見カラフルで華やかな、よく見るとグロテスクな挿絵を描きました。

シュルレアリスムを同時代のフランスで実践し、日本に紹介したのが富岡出身の福沢一郎です。本展では福沢がフランスで生んだ絵画と、制作過程で参照した資料を通して、福沢の独自性と批判精神を浮き彫りにします。

本展では、戦後日本の閉塞感を脱する時代に広がったシュルレアリスム的な表現や、現代の作家たちの絵画、写真、版画など、多様なジャンルの作品に表出する異世界と見えない感覚へのアプローチにも視線を投げます。

亀山知英≪HI-TO-BI-TO 2022-2023≫ほか、展示風景

最後に、自然光の入る展示室1では、旧六合村(現中之条町)の山で制作を行ったスタン・アンダソン、廃材を用いたブリコラージュ作品により館林の「風景」を構成した亀山知英を紹介しています。

46作家の約150点を全展示室で紹介している本展を、どうぞご覧ください。

県立館林美術館
学芸員 松下 和美さん

1998年より群馬県立近代美術館学芸員。のち県立館林美術館学芸員。主な担当展覧会に、「鹿島茂コレクション フランス絵本の世界展」(2017年)、「ピカソ展-ゲルニカ[タピスリ]をめぐって」(2019年)、「フランソワ・ポンポン展」(2021-22年)など。

県立館林美術館(館林市日向町2003)■0276-72-8188 ■6月25日まで■月曜休館■一般620円、大高生310円、中学生以下無料■6月11日午後2時から、学芸員による作品解説会(申込不要・要観覧料)

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