20年 [北朝鮮による拉致被害者・蓮池薫さんの講演を先日聞いた…]

北北朝鮮による拉致被害者・蓮池薫さんの講演を先日聞いた。1978年、20歳の大学生だった蓮池さんは工作員に襲われ、2002年に帰国するまでの24年にわたり北朝鮮での生活を強いられた。その一部始終を語ってくれた。

「あれから20年。政府認定の被害者はまだ12人もいるが、誰ひとり帰っていない。拉致問題はまだ終わっていません」。壇上の蓮池さんの言葉に、はっとした。突然姿を消した我が子が半世紀近く帰ってこない―家族のやるせなさは、想像を絶するものがあるだろう。

蓮池さんらが帰ってきた日、私は早朝から産院にいた。思いのほか難産で、赤ん坊が生まれたのは翌朝だった。新聞1面のトップ記事は、「拉致の5人帰国」という、この年最も重大なニュースの一つだったと記憶している。

息子は今年、二十歳を迎えた。あっという間に大人になったと思う一方で、我が子の帰りを待つ親の側に立って考えると、20年はあまりにも長い。

講演後、誕生記念として保存していた新聞を久々に広げてみた。45歳の蓮池さんが、同時に拉致された奥さんらと飛行機のタラップを降りている写真を見ながら、一刻も早い解決のために私たちにできることは何だろうかと改めて考えている。

(上原道子)

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