食べる人と作る人が共に幸せになるために(vol.17)

農業カメラマン網野文絵のKnow Life 

 

角田 勉さん(前橋)

いつも笑顔で自慢の畑を案内してくださる角田勉さん。角田さんは、写真絵本「やさいのはな なんのはな?」の監修をしてくださった

今回は前橋市総社町で農業を営む、がってん野菜 角田勉さん(77)を紹介します。

角田さんが農家を始めたのは今から17年前。それまでは37年間、県内の大手種苗会社で野菜の品種改良をしていました。当時はたくさんの農家を周り、畑の様子を聞きながら「より美味しくて収穫量が増える品種を作ろう」と仕事に励んでいました。しかし、現場の声を聞けば聞くほど農家さんが弱い立場であることに気付き、違和感を持ち始めました。

農業界は、消費者・販売者・流通者そして生産者の4つに大きく分かれますが、農家は一定価格の農業資材や農薬、種を購入して作物を育てるものの、販売時は相場に影響されてマイナスになることもあるのです。この農業構造に一石を投じたい!と思ったのが就農のきっかけでした。

相場に左右されない価格で売ることと、お客様に常に味やお得感などサプライズを提供するという2つの目標を掲げ、家族で「がってん野菜合同会社」を立ち上げました。

道路沿いで入りやすい直売所

まずは、角田さんが生産した食べきりサイズの新鮮野菜が全品100円で買える無人直売所を自宅でスタート。野菜の味と品質はピカイチなので毎日お客さんが立ち寄りました。順調にスタートした一方、仕入れ経費の高騰にやはり農業の厳しさを実感しました。

そこで新たな販路を見出すため「エグ味が少なくて、最高に美味しい」キャベツ作りに取り掛かりました。会社勤務の時に培った判断力や決断力を生かし、数百にも及ぶキャベツの栽培試験の末に、1つの品種と栽培方法を見つけ出しました。

顔より大きな極甘キャベツが大人気

2021年、ついに「極甘キャベツ」という名前でブランド化に成功したのです。首都圏のスーパーや八百屋で、通常の1.5~2倍の値段で売られ、楽しみに待つファンも付きました。「角田さんの野菜だから買う」「ずっと作り続けて」と声をかけてくれる消費者に出会うと、涙が出るほど嬉しいといいます。

ブランド作りの大切さを実感した角田さんは、今度は冷凍スープやパスタソースなど加工品に取り組み、手応えを感じているようです。これからは息子の啓明さん(52)が後継者になりますが、お客様からの言葉を原動力に、さらなる農業の革新をもたらすことでしょう。

コラムは今回で終了になります。3年間農家さんのお話を読んでくださり、本当にありがとうございました!

 

あみのふみえ/フォトグラファー

もともと野菜が苦手だったが、畑で感じた匂いや景色に衝撃を受ける。カメラマンとして農家や畑・作物を撮影するうちに、野菜が好きに。新しい野菜の“見かた”を発信することがライフワーク。
写真絵本「やさいのはな なんのはな?」(岩崎書店)を出版。現在15000部、第4刷。
■インスタグラム: @amino_fumie
■HP: www.knowlifephotos.com

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