イタリアで感じた本当の「豊かな」生き方! (vol.6)

農業カメラマン網野文絵のKnow Life 

 

野菜のことになんでも気さくに答えてくれた慶子さん

前橋出身の今井慶子さん(43)は、現在は渋川で野菜の生産者として活躍しています。食材を使う料理人から、作る側の生産者への転身。今の彼女があるのは、イタリアで感じた豊かな生き方にありました。

京都の理系大学を卒業し、大阪でプログラマーになった慶子さん。会社生活の楽しみはランチタイム!毎日、手作り弁当を持参していたとか。「料理を作るって何て楽しんだろう」と気付き、会社を退職してシェフの道を目指しました。

大阪のレストランでは、料理の腕を上げたいと信頼できる料理長に相談すると、「責任をもって現場に立つと技術は身に付くもの。トップの景色を見て自分を磨け」とアドバイスをもらい、次は東京の有名イタリアンで4年修行したそうです。

その後、慶子さんのあくなき向学心は、イタリアへ。ところが、心をワクワクさせて、イタリアの大地を見ると、仰天…。その畑は、生まれ育った前橋とさほど変わりませんでした。

なぜ、ド田舎の畑で収穫した食材で美味しいパスタができるのか…?

憧れの地のイメージが壊れそうでした。ところが、研修先は、畑・宿泊所・農家レストランが全て一か所に集まった素晴らしい環境。おまけに羊や鶏も放し飼いで、見るもの全てが新鮮でした。

宿に泊まりに来たお客様は、今晩の食材を畑で収穫して、シェフに渡し、シェフは、毎回、即興料理を提供するのです。

新鮮な食材を畑から食卓に。日本の働き方や食のあり方とかけ離れすぎていましたが、慶子さんはハッとしました。都会で多様なメニューを作り、技術を習得することはもちろん大事だけど、お客様が食べたいものを食べられるのが、本来のレストランのあり方なのではないか。レストランという場所は、本当に豊かな時間の過ごし方や人への向き合い方が生まれる場所だと身をもって学んだそうです。

群馬でそういう場所を作りたい―。

現在、慶子さんは渋川でパプリカをメインにした畑と古民家を管理しつつ、そこで家族向けの農業体験をスタートしました。

農家として、料理人として、日本版の農家レストランの実現に向けて一生懸命になっているかっこいい慶子さん。これからも私たちに刺激をくださるでしょう。

空から黄色いパプリカが降ってくるよう

あみのふみえ

大学では、農学を学ぶ傍ら、写真部で活動。卒業後は、カネコ種苗㈱にて広報カメラマンとして13年勤務。もともと野菜が苦手だったが、畑で感じた匂いや景色に衝撃を受ける。これをきっかけに農業の現場を写真を通して伝えたいと農業カメラマンとして活動している

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