農業カメラマン網野文絵のKnow Life
ハーブソルトの購入がきっかけで知り合った渋川飯塚ファームさん(渋川市川島)。「ぐんまの農産物を、おいしく、おしゃれに」をコンセプトにするファームです。
家を一歩出れば畑という代表の飯塚公知さん(42)のお宅に撮影で伺うと、必ず小学生の娘さんたちが私を出迎えてくれます。木陰のハンモックや秘密の遊び場、カモミール畑.…自慢そうに案内してくれる娘さんとのふれあいが楽しみです。
今回は子供が就農のきっかけとなった飯塚さんのお話です。
飯塚さんは、渋川市でサラリーマンの家に生まれ、地元を離れ大学を卒業した後、大手石油会社に就職。全国を転勤して回りました。
結婚し子供が生まれた飯塚さんは、転勤を繰り返すことは、子供にとって、「地に足を付けられずにストレスだろう」と感じました。ご自身も、毎晩帰りが遅く、子供との距離も離れたまま…もっと子供の近くで、自然に触れた生き方をしたい!
そんな飯塚さんに感化され、なんとご両親も一緒に農業をすることを決めたそうです。
飯塚さんと両親、両方の我が子を思う気持ちがまとまり、ついに2012年、実家で農業を始めました。
両親とは畑を分けて、まず、自身は青梗菜(ちんげんさい)の栽培に取り組みました。しかし、生育が思うようにいかず悩むことに。目に留まったのは、奥さまが育てていたハーブの苗でした。しかしハーブだけでは、需要が少ないと再び考え込みました。その時、「何を残せたのかな」という亡き兄の言葉を思い出し、「自分らしい生き方と社会のためにできること」を考えました。
一度離れたからこそ、自然豊かな「地元農産物の価値」を感じていた飯塚さん。そして、逆にハーブ栽培をすることが、農産物の新たな価値を生み出すことになると考え、「ハーブ×フルーツ」のジャムを誕生させました。それを皮切りに販路がどんどん広がり、生産が追いつかないこともありましたが、いつもしっかりと畑を整えることを第一とし、16年に加工場を完成させました。
さて、サラリーマンから急展開した飯塚さんの姿は、子供たちにどう映っているのでしょうか? やはり、日々の仕事でそれほど遊ぶ時間はとれないけれど、親子2代で働く姿を、子供たちが間近に見ています。私は、「素敵な環境になったんだな」と、娘さんたちの笑顔を見て感じました。着実に前進する飯塚ファミリーがこれからもとても楽しみです。

