渋川市北橘歴史資料館 [道訓前遺跡 焼町土器](Vol.23)

加・英・仏 3か国を旅したあっぱれな土器

道訓前遺跡出土の焼町土器(深鉢)
高さ62cm

写真の土器は高さ62㌢の大型の縄文土器です。国指定重要文化財、道訓前(どうくんまえ)遺跡出土品(165点)の中の「焼町(やけまち)土器」です。2006年カナダ・モントリオール考古博物館「日本展」、2012年イギリス大英博物館「土偶展」、2018年フランス・パリ日本文化会館「縄文|日本における美の誕生」展に出品展示され好評を博した「あっぱれな土器」です。

同遺跡は赤城山麓の台地上に所在する縄文中期(およそ4500年前)の集落遺跡です。出土した土器は立体的な装飾に富み、中でも焼町土器と呼ばれる一群は、渦巻き文を組み合わせ、耳状の突起を加えた立体的な装飾が特徴。煮沸や貯蔵に使用されたと考えられています。関東から中部地方における縄文土器造形の到達点を示す貴重な学術資料として高く評価されています。

この土器を観察すると、リング状の突起4個が口縁をめぐり、器面全体に粘土紐の貼り付けによる曲隆線文(曲がりくねる隆起線)と沈線文(曲隆を強調する深く掘った線)が施されており、胴部には人の形のような文様のあるのがみてとれます。空に向かい手を広げるような文様が連続し、「何人いるかな?」と数えてみるのも面白いでしょう。

本館は1992年に「北橘村歴史民俗資料館」として開館しました。旧石器時代からの時代別の展示をする「常設展示室」、民具資料の展示をする「企画展示室」、竹工芸や土器づくりなどの場として活用されている「伝承学習室」からなります。常設展示室の「昭和9年」とある柱時計は正時になると「ボーンボーン」と正確に時をしらせ、時代が連綿と続き現在に至ることを気づかせてくれます。

北橘歴史資料館では、ご紹介した「焼町土器」のほか道訓前遺跡出土の「勝坂式」や「三原田式」などの土器が展示してあります。世界を旅した美しい土器とその仲間たちを是非、間近でご覧ください。

渋川市北橘歴史資料館
館長 小島 達夫 さん

こじま・たつお/1959年生まれ。明治大学文学部史学地理学科(東洋史学専攻)卒。公立学校教員、群馬県埋蔵文化財調査事業団職員等をへて2021年より現職。

きてみて
渋川市北橘歴史資料館/渋川市北橘町真壁246‐1/℡ 0279‐52‐4094/午前9時~午後5時/一般200円、大高生100円、中学生以下無料/月火曜・年始年末(12月28日~1月4日)休館)月火が祝日の場合は開館し翌日(土日を除く)休館

掲載内容のコピーはできません。