熟成の、その味は [今年初めてチャレンジした梅干し作り。夏の「土用干し」の直後…]

今年初めてチャレンジした梅干し作り。夏の「土用干し」の直後、しわしわになった梅干しが嬉しくて、一つ口入れてみたところ、あまりにしょっぱくて、びっくりした。塩分量を15~18%で調整したのだが、「塩を入れすぎたか」と少し落ち込んだ。母に相談すると「どうしても気になるならカラカラに干して熱湯につけて塩抜きして、砂糖漬けにしてもおいしいよ」と。でも、今年はやっぱり王道の梅干しを楽しみたい……。そう思いながらあれこれ調べてみたら「半年ほど熟成させると味がまろやかになる」との記述を見つけた。

これだ。食べたい気持ちをぐぐっとこらえ、全ての梅干しをガラスケースに入れて、納戸の奥へ。たまに取り出して、カビなどの異変がないかを確認しながら、「熟成」の時を待った。

最近は梅干しの周りにしっとりと梅酢がにじみ始め、そろそろかな、と思っていた矢先、少し体調を崩した。食欲がなかなかわかない中、夜中に突然目が覚め「梅茶漬けが食べたい」。時が来た、と納戸を開けた。

手に取ると、しっとり、もったり。半分に割って食べてみて驚いた。きつい塩味の角がとれ、なんとも言えないまろやかな旨みが広がる。梅干しの奥深さを感じた瞬間だった。「来年も絶対に作ろう」。梅茶漬けを食べ終え、早速2度目の梅仕事に心を馳せた11月の夜だった。

ほぼ半年間、納戸の中で熟成の時を刻んだ梅干したち

(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)

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