桜の季節 [今年は各地で次々と桜開花のニュースが聞こえてくる…]

今年は各地で次々と桜開花のニュースが聞こえてくる。前橋でも18日、ソメイヨシノの開花が発表された。観測史上最も早い開花宣言となった。新年度が始まる4月まで桜は持つだろうか。去年は前橋公園の見事な桜が4月に着任したばかりの新しい仲間たちを迎えてくれたのを思い出した。

桜の名所は日本だけでなく、国外にも多くある。この季節になると思い出すのは、中国江蘇(こうそ)省無錫(むしゃく)市の太湖湖畔の桜だ。約3万本を超す桜が並ぶ太湖周辺は中国最大級の桜の名所として有名で、毎年開催される「国際花見ウイーク」には多くの客でにぎわう一大観光地だ。無錫は上海から中国版新幹線で1時間足らずの場所にあり、何度か友人たちと花見を楽しんだ。

無錫の桜の歴史は、日中友好の願いを込め、元日本兵だった三重県の男性が植樹をしたことから始まった。植樹は1988年から続き、中国側にも活動の輪が広がり、日中関係の緊張が高まった時期も桜を通じた交流は途切れることはなかった。

一度、太湖のほとりで桜守りの趙さんに話を聞いたことがあった。桜は広い範囲に根を張ることから、植樹された桜をきちんと根付かせるため、水の管理や剪定作業など、細かな心配りが欠かせないという。「桜をもっと知りたくて奈良の吉野山に行ったとき、あまりの美しさに言葉を失った」。そう話していた趙さんの桜は、今年も見事に咲いただろうか。

色とりどりにライトアップされた中国・無錫の桜

(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)

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