きっかけを作る(vol.225)

私は伊勢崎市で設計事務所をしています。住宅や家具などの設計が仕事です。設計とは建物の形を考えることですが、それと同時に、その場所で起こる「きっかけ」も設計しようとしています。

住宅や小屋、家の中にある家具だとしても、使う人が楽しくなる、心が豊かになる、新しい何かを発見するなど、見たことがない風景を見るきっかけを作りたいのです。

きっかけの作り方はいろいろです。何かを足したり、引いたり、大きくしたり、小さくしたり。例えば、自宅を設計した際には「玄関という空間」をなくすことで、きっかけを作りました。外から来ると、いきなり大きなサッシがあり、開けると土間。家の中に入った途端にリビングです。そこが我が家の入り口で、玄関の代わりです。そうすると、リビングの中では「外」を隣りの部屋のように、反対に外では「リビング」を屋外の繋がりのように感じたり。リビングという言葉には収まらない場所になりました。すごく大きく変わった訳ではないけれど、住んでみると豊かな気持ちになっています。

きっかけづくりは誰にでもできます。庭にベンチを置いたり、小さなテーブルを置いたり。誰かがそれを使ってくれればそこには、今までなかった風景が生まれます。

その延長として、境界線がないような敷地にいくつか住宅を建て、公園のような住宅地をつくるプロジェクトを立ち上げました。10年、20年の積み重ねの先に、ここを理想の風景にできたら良いなと計画しています。豊かな地域を作る仲間も募集中です。新しい風景を一緒に作りませんか。

自宅である波志江の家。大きな窓と土間でリビングと庭がつながる

建築士
矢内 勝さん

【略歴】1980年伊勢崎市生まれ。2003年金沢工業大学建築学科、2005年同大学大学院修了。2013年矢内建築計画一級建築士事務所設立。福祉施設、住宅、小屋、家具などの設計を手がける。https://www.yanaimade.jp/

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